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再エネ普及の切り札?コーポレートPPAとは

記事公開日:2022/06/05 最終更新日:2023/09/20
ゼロカーボン実現に向けて欠かせないのが再生可能エネルギーの普及拡大です。
多くの企業が再エネ導入の取組を掲げています。

最近、環境取組に先進的な企業のプレスリリースでよく目にするキーワードが「コーポレートPPA」です。
再エネ普及の切り札とも言われるこの取組、一体どんなものなのでしょうか。

1. コーポレートPPAとは

コーポレートPPAとは、再生可能エネルギー由来の電力調達の手法のひとつです。

再エネ電力を調達する場合、最もシンプルな方法は、自社の費用で、自社の敷地内に太陽光パネルを設置し、再エネ電力を自社で使用することです。
太陽光パネルの価格が低下してきた昨今では、自社で太陽光発電を所有することも現実的になってきました。

一方で、それなりの規模の太陽光発電を導入するには初期費用が大きくなります。
自社所有ですのでメンテナンスや管理責任が発生するため、導入後も一定程度コストや手間が必要になります。

こうした課題を解消するために登場したのがコーポレートPPAです。
コーポレートPPAは自社ではない第三者に太陽光パネルを設置・所有させ、供給される再エネ電力量に応じて長期間、固定 料金を支払う事業モデルです。

 


コーポレートPPAのメリットは初期投資が不要のため、比較的大きな規模の太陽光発電の導入が現実的となることです。
また、メンテナンスや管理責任も外部化できるため、企業にとっては再エネ電力調達に関わる諸々の手回りから解放されます。

ゼロカーボンを加速させるためには、再エネ電力の普及拡大のスピードを上げていかなければなりません。
そのためにも、自己設置・自己所有よりも再エネ導入のハードルを下げたコーポレートPPAにニーズが生まれているのです。

2. コーポレートPPAが注目される背景

近年、コーポレートPPAが注目されているのは二つの理由があります。

ひとつは「追加性」という価値に注目が集まっているからです。
これまで企業のゼロカーボンの取組の中で比較的早期に取り組みやすいのが、非化石証書の購入による実質的な電力の再エネ化でした。
こうした証書購入は企業のCO2排出量をオフセット(相殺)する効果があります。
ただ、すでに建設済みの再生可能エネルギーの環境価値の再販という側面があり、新しく環境価値を創出したわけではありません。

この新しく環境価値を創出することを「追加性」といいます。
非化石証書を採用する企業が増えてきた中で、さらに踏み込んだゼロカーボン施策に取り組む企業は「追加性」に重点を置き始めているのです。

もうひとつの理由が、「電力調達価格の安定化」です。世界的な燃料価格高騰と円安の影響により、国内の電力価格も大きく変動しています。
化石燃料を輸入に頼っている我が国において、今後も国外情勢の変化が電力価格のボラティリティに影響することが予想されます。
一方、追加性ある再エネ電力は燃料価格の影響を受けないため、企業の電力調達価格のボラティリティを抑制する効果があると見做されはじめました。
変動と固定をうまくミックスすることで、電力調達のリスク相殺を狙うイメージです。

当然ながら、コーポレートPPAは国内の再エネ電力の普及拡大に資する取組ですので、まさにゼロカーボンに相応しい取組と言えます。

このように、追加性あるゼロカーボンの取組、電力調達価格の安定化がコーポレートPPAに注目があつまる理由となっています。


3. コーポレートPPAの特徴

では、コーポレートPPAについて詳しく見ていきましょう。

そもそもPPAとはPower Purchase Agreement、「電力購入契約」を意味する言葉で、小売電気事業者が発電事業者から電力を調達する際に結ぶ契約です。
このPPAに「企業」を意味する「コーポレート」を冠するのがコーポレートPPAであり、文字どおり、「企業」が再生可能エネルギー由来の電力を「発電事業者」から長期的に固定価格で 購入する契約です。

通常のPPAとの違いは、電力の購入者が小売事業者ではなく「企業」であること。
したがって、コーポレートPPAの対象の再エネ発電所は、契約した企業「専用」の発電所となります。


コーポレートPPAにはオンサイト型とオフサイト型に大別されます。
オンサイト型とは需要家の敷地内や屋根に太陽光パネルを設置して再エネ電力を供給する事例が一般的です。
一方のオフサイト型は需要家の敷地の外に再エネ発電所を作り、送配電系統を経由して、遠く離れた施設に再エネ電力を供給する方式です。

コーポレートPPAは、これまではオンサイト型が多く普及していました。
オンサイト型は送配電利用料の託送料金や再生可能エネルギー発電促進賦課金が不要であり、オフサイト型に比べてコスト面で有利となります。
一方で、屋根や敷地面積の制約で再エネ導入量が限定的である欠点があります。
また、PPA契約期間中の建物の建て替えや移転の取扱が難しい問題も指摘されてきました。
通常、PPA契約は20年程度の長期間で、同一場所での太陽光パネル設置が前提であるため、PPA契約期間と建物の建て替えや移転などの時期に齟齬が生じるリスクがあります。

こうした課題に対応したのが、オフサイト型コーポレートPPAです。
オフサイト型の場合、需要家の屋根・敷地と無関係な場所に設置するため、導入量の制約はありません。
また、再エネ供給は送配電系統を介すため、供給先の場所も比較的柔軟に対応できます。
さらに、オンサイト型で手間を生んでいた、太陽光パネル設置時の施設停電調整や屋根構造計算、修繕・点検も不要です。

一方、オフサイト型はオンサイト型に比べ割高になる傾向があります。
メリット・デメリットを比較した上で、最適な方式を選択することが大事です。

オフサイト型が期待されているのは、「再エネ導入量の制限が緩和される」「供給先の自由度が上がる」メリットです。
以降は、このオフサイト型を中心に詳しく見ていきます。

4. オフサイト型コーポレートPPAの導入方法

オフサイト型コーポレートPPAの実現方法には、大きく「直接型」と「間接型」に分類されます。

「直接型」では、まず、オフサイトでPPA事業者が発電した再エネ電気を、PPA契約を結んでいる需要家が受け取ります。
オンサイトPPAでも、PPA事業者が屋根上などで発電した電気を需要家が一旦受け取り、その後自家消費しますが、発電した再エネ電気を一旦受け取るところまでは一緒です
その後、需要家が自分自身で送配電網を利用して電気を需要場所まで運んで、運んだ電気を自家消費します。
発電した電気を自ら運んで自ら消費するので、「自己(=自分自身で)託送(=電気を運んで使う)」といいます。

図 直接型(フィジカルPPA)


自己託送の利用にはルールがあります。
先ほども触れましたが、あくまでも「自己」に着目した電気の送り方になりますので、自己託送を利用できる条件として、「発電者(PPA契約締結している需要家)」と「電気を送る先(実際に電気を使う需要家)」は、基本的には 「自分自身同士」に限られます。
例えば、「自社の本店がPPA契約を締結して、自社の工場に送る」ようなイメージです。

一方、「間接型」とは、通常の電力使用形態と同様に、発電事業者が再エネ発電所を建設し、小売事業者が再エネ電力・その他電力・環境価値をまとめて需要家に供給する仕組みです。

図 間接型(フィジカルPPA)


「間接型」の魅力は、「直接型」の自己託送と異なり、電気の「送り元・送り先」等の制約について考える必要がありません。
ですので、例えば、送り先を自社の子会社やグループ会社など、様々な組み合わせを考えて複数の施設に供給することが可能という点です。
再エネ電力は季節や時間帯によって、1施設では使い切れない場合が発生します。

たとえば事務所ビルでは、ゴールデンウィーク中は施設の電力需要が減少します。
この時、再エネ電力を1施設では十分に使い切れず、余らせてしまう可能性があります。
「間接型」であれば例えば、自社の子会社やグループ会社なども含めて、複数の施設に再エネ電力を供給できるため、余らせる問題を抑制することができます。

「直接型」「間接型」それぞれに特徴がありますが、再エネ普及拡大を考慮すると、1発電所から複数の施設で柔軟に再エネ電力を活用できる「間接型」の方が、より使い勝手が良いと考えています。

5. 国の推進体制

再エネ普及の切り札として、我が国ではコーポレートPPAの積極的な活用が期待されています。
推進策として、環境省より「令和3年度補正予算 需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」が公募され、令和4年5月現在で13件が採択されました。

令和3年度補正の公募要件は、再エネ発電所2.0MW以上、PPA期間が8年以上等の条件が課されており、大きな規模かつ長期安定的な再エネ調達に期待が寄せられていることが伺えます。

コーポレートPPAでは、発電事業者・小売事業者・需要家の三者の連携が欠かせません。
前述の補助事業においては、公募要件として「三者による基本合意書の締結」を課しています。
再エネ発電所を建設するだけでなく、供給の担い手も含めた約束が為されていることが条件となります。


なお、一般的には、 三者基本合意により、基本的な約束事を取り決めた後に、各社の義務・権利の履行条件を定めた二者間の個別契約を締結していくことになります。
コーポレートPPAにおいては、こうした契約手続きが複雑・煩雑化するおそれがあり、発電・小売事業者の需要家に対する丁寧な説明が求められます。
二者間の契約においては、自社以外の契約に関与することができません。(たとえば、発電事業者と需要家との二者間契約に対しては、小売事業者が主体的に関与できません)
このため、三者基本合意においての約束事は非常に大切な役割を果たします。

別の観点から見れば、発電事業者と小売事業者が双方スムーズに意思疎通できる状態であれば、コーポレートPPAの導入が円滑に進むと考えられます。
当然、発電事業者と小売事業者との情報やりとりの透明性が担保されることが前提です。


6. まとめ

コーポレートPPAの概要と特徴について解説しました。
オフサイト型をシンプルにまとめると、「発電事業者がお客さま専用の再エネ発電所を作って」、「送配電事業者が電力を送って」、「小売事業者が再エネを供給する」という事業です。

気付いた方もいらっしゃるかも知れません。
この関係性は今までの電力事業そのものでは、と。
コーポレートPPAは「お客さま専用の再エネ発電所」という特性以外は、これまでの電力事業と瓜二つなのです。


大袈裟かも知れませんが、コーポレートPPAは「電力事業のイノベーション」とも言えるのです。
イノベーションとは、「古くからあったものを全く新しいもののように観察すること」とも言われています。
まさに、古くからあった電力事業の仕組みに、「お客さま専用」「再エネ発電所」という価値を付加してアップデートしたのです。

関西電力では、これまで培った電力事業のノウハウを活用し、コーポレートPPAに取り組んでいます。
ゼロカーボンの先進的な取組として「電力事業のイノベーション」にご興味あれば、ぜひお気軽にご連絡ください。

※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※この記事は2022年6月時点の情報に基づき作成しております。


この記事を書いたメンバー

林 直人

林 直人

愛知県出身。趣味は読書、音楽・映像制作、ウェブデザイン、NPOの事業支援、スケボー。お仕事は法人営業で、お客さまの電力契約から再エネ導入、省エネ活動、新規事業共創まで幅広く活動しています。このサイトは僕たちの「こんなのがあれば面白いよね」から始まりました。仕事に、ブログに奮闘する関電社員の姿をご覧ください。

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