コーポレートPPAの「中の人」

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ゼロカーボンの施策として、ますます注目されているコーポレートPPA
ここ数年で導入企業が増え、プレスリリースを目にする機会が多くなりました。

我が社もコーポレートPPAをやってみたい!でも、誰に相談すれば、どう進めれば良いのか分からない。
そんな方も多いでしょう。

ご安心ください。
実は、ゼロカーボン板編集部には関西電力のコーポレートPPAの推進役がいます。
普段はなかなか見えてこない、コーポレートPPA "中の人" をご覧ください。


(左) 林直人/ソリューション本部 法人営業グループ課長
(右) 小出健人/ソリューション本部 法人営業計画グループ課長

目次
  1. コーポレートPPAとの出会い
  2. 事業推進のリアル
  3. 新規事業の難しさとやりがい
  4. これからの未来図
 

1. コーポレートPPAとの出会い

—— 関西電力のコーポレートPPA推進における、二人の役割を教えてください。

小出 
コーポレートPPAは発電事業者、需要家、そして私たち小売電気事業者の三者一体の取組となります。
その中で、私は主に発電事業者との調整や、自社内の関係部署の連携、需要家への提案戦略・計画を担当しています。

 小出くんが事業全体の統括、僕は一つ一つの案件のプロジェクトマネジャー(PM)です。
プロジェクトの成功の重要要因に需要家、つまりお客さま企業の意思決定があります。
PMとしてプロジェクト全体のデザイン、工程管理、リソース配分などのマネジメントをやりつつ、お客さまへのプレゼンや契約交渉に直接入ったりします。

—— 担当したコーポレートPPAのプロジェクト実績を教えてください。

 公表済みのものだと、日本生命さま*1、大阪環状線およびJRゆめ咲線*2 などを担当しました。
2023年12月に発表した、国内最大規模のプロジェクト*3 も僕のチームです。
小出くんのチームと二人三脚で頑張りましたよ。メディアの取材も一緒に受けたな(笑)

小出 林さんがドンドン実績を作ってくれますからね(笑)
私はプロジェクト単位では後方支援に徹していて、普段は仕組みづくりに携わっています。

*1 コーポレートPPAによる日本生命への太陽光発電開発・電力供給の実施
~再エネECOプランと組み合わせた実質再エネ100%は当社初~
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2022/pdf/20220927_1j.pdf (外部リンク)

*2 コーポレートPPAによるJR西日本への再生可能エネルギー電力供給の実施

~大阪環状線およびJRゆめ咲線運転用電力が実質再エネ100%に~
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230619_2j.pdf (外部リンク)

*3 双日およびJR西日本とのコーポレートPPA実施の合意
~再エネ由来の電力供給と環境価値提供を組み合わせた国内最大規模の取組み~
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231214_1j.pdf (外部リンク)





—— どういうきっかけでコーポレートPPAのプロジェクトに関わるようになったのですか?

 えらそうに、ゼロカーボン板で解説記事*4 を書いちゃったからです(笑)
記事だけ書いて現実に実装できないのは、理想論の言いっ放しみたいで格好悪いでしょう。
「コーポレートPPAがそんなに素晴らしいなら実現してみろ」と思われて当然ですから。
僕は口だけじゃなく、ちゃんと実現させる男ですよ、と。

小出 私は営業戦略のチームに異動して、再エネ販売関係の事業を統括することになりました。
ちょうど日本生命さまのプロジェクトが佳境の時期でしたね。
必死に勉強しつつ、実案件を成立させなければならない、ハードな時期でした。
とはいえ、気候危機への対策、地球に「ありがとう」と言われるような仕事がしたくてこの会社に入ったので、非常にやりがいのある仕事です。

*4 再エネ普及の切り札?コーポレートPPAとは
https://zc-biz.kepco.jp/media/learn/corporate_ppa



コーポレートPPAの戦略チーム

2. 事業推進のリアル

—— 二人から見て、コーポレートPPAはどういう位置づけですか?

小出 お客さま・社会のゼロカーボンに貢献できる有力な手段、ということは当然のことながら、私たち小売事業者にとって「再エネの仲介」という新たな事業と捉えています。
電気は貯蔵が困難で、生産と消費を同時にしなければならない性質があります。
よって、発電と需要家を適切に繋ぎ、生産・消費のバランスを日々みていかなければなりません。
太陽光をはじめ自然変動する再エネは基本的に生産が天候任せなので、再エネの仲介としての役割は重要です。

林 
過去の記事にも書いたとおり、「電力事業のイノベーション」と捉えています。
コーポレートPPAという聞き慣れない言葉を使っているものの、電気事業法上は極めてオーソドックスな発電小売事業です。
そこに、現代の技術を使って「お客さま専用の再エネ発電所」という要素を結合させている。
イノベーションは「新結合」と言われるとおり、古くからあったものを現代の技術でアップデートさせることで起きます。
…なんてことを、お客さまの前でも熱弁しています(笑)

—— 制度設計やプロジェクト推進で心掛けていることはありますか?

林 リスクコミュニケーション、ステークホルダーマネジメントです。
コーポレートPPAはサービスというより、電源投資と捉えた方がより本質に近い。
長期固定価格での契約になるので、お客さまにとって簡単な意思決定ではありません。
耳障りの良いメリットだけでなくリスクについての説明責任を果たすこと、お客さま内の経営決定に向けて僕たち自身も一緒に汗をかくことを心掛けています。

小出 需要家となるお客さまとの交渉の傍ら、発電事業者とも成案に向けて交渉が必要になります。
電源開発に向けファイナンスが必要なケースでは、かなりタイトな工程でプロジェクトを動かさなければなりません。
制度設計上、タイトな工程をお客さまや社内スタッフにお願いするのは心苦しいものの、譲れない一線はきっちり守ることを心掛けています。




3. 新規事業の難しさとやりがい

—— コーポレートPPAは新規事業です。新規事業の観点での苦労話があれば教えてください。

小出 適切なプライス設定、再エネ電力の需給バランシングなど、事業に影響するファクターが多いです。
社内ではそれぞれのファクターを所管する部署が異なり、新規事業ゆえに前例がないので、調整には大きな負荷がかかりました。

 関西電力だけでなく、お客さまにとっても前例のない新しいチャレンジです。
そのため、意思決定には、事業の大儀、リスク分析、将来予測、ケーススタディなど膨大なスタディを重ね、契約締結まで1年以上掛かるケースがあります。
その分、クリアした時には、社内だけでなくお客さまともお互いの頑張りを称え合えてジーンと来ます。

—— 失敗談などはありますか?

 数えきれないほどありますよ。あまりに多すぎて覚えてないぐらい(笑)
中でも、プロジェクトの立ち上げ当初は社内の理解を得られないこともあって、悔しい思いをしたことが記憶に残っています。
ただ、振り返ると僕の持っていき方が良くなかった。
こちらの正論ばかり主張して、他部署の視座が欠けていた。
正義の反対は悪ではなく、また別の正義なんですよね。
今になればPMとしての力不足だと反省しきりですけど、当時はぷりぷり怒っていました(笑)

小出 コーポレートPPAの実務の難しさのひとつに、「鶏と卵」みたいな問題があります。
発電事業者は、発電した再エネ電力を買い取るオフテイカーがいなければ電源開発できません。
一方、オフテイカーとなる小売は、再エネを消費する需要家の存在があって初めて再エネの仲介ができます。
ということは、需要家となるお客さまは電源開発より前に意思決定する必要があります。
しかし、まだ完成していない再エネ発電所と契約するのは容易な意思決定ではありません。
こうした鶏と卵に挟まれて右往左往してしまうのは、今でも結構あります。


コーポレートPPAのプロジェクト担当チーム


4. これからの未来図

—— コーポレートPPAの将来像について展望を教えてください。

小出 現在は太陽光が中心ですが、他の再エネ電源でもトライしてみたい。
発電・需要とのマッチングが可能であれば、どんな再エネ電源でも適用可能な拡張性の高さがコーポレートPPAの利点です。
再エネ電源は太陽光、風力、水力など各々で特性が異なるため、特性に合わせた制度を構築していきたいです。

 GHGプロトコルの改訂議論があり、目下のところ、scope2における再エネの価値評価の変更が取り沙汰されています。
主に、「追加性」と「1時間単位での同時同量(hourly matching)」を再エネの評価項目に入れるような議論が聞こえてきます。
「追加性」はコーポレートPPA、「同時同量」は仲介となる小売電気事業者の価値をそれぞれ高めるでしょう。
僕たちの役割はますます重要で、より多くのお客さまにコーポレートPPAを提供できるよう、これまでの経験を伝承・共有していかなければなりません。




—— コーポレートPPAを推進していくうえで、どんなところにやりがいを感じますか。

小出 コーポレートPPA は関西電力のみならず、日本の、そして世界のゼロカーボン施策の中心に育ってきています。
気候変動対策という人類共通のフィールドのど真ん中にいる感覚で、自分の勝負したかった分野の中心で仕事ができるのは大きなやりがいです。
あと、当然、成案になった後の林さんとの打ち上げも(笑)

林 たしかに、打ち上げは大きなやりがい(笑)
一つ一つのプロジェクトは、成案に至るまで沢山の人の協力を得ることになります。
だからこそ、チームのメンバーの成長に繋がったり、全員で良い時も苦しい時も分かち合えたりできるのが、PMとしてのやりがいですね。
プレスリリースで自分たちの仕事を社会に提示できるのも嬉しい。
リリース当日はSNSで盛り上がっていないか、皆でチェックします(笑)

—— 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

小出 コーポレートPPAは規模の大きな事業で、当然ながら一人の力ではできません。
成案に至らなかったプロジェクトも含めて、関わってくれた全ての人に感謝しています。
振り返ると「皆で頑張った」といつまでも記憶に残る経験が得られます。
ぜひ一緒にトライしましょう。

 全く同じ(笑)
コーポレートPPAは将来にわたる温室効果ガスの削減という、とても深刻な社会課題の解決に繋がるものです。
きっと、家族や友人に胸を張れる仕事になる。
ぜひ一緒にトライしましょう…やっぱり全く同じですね(笑)



コーポレートPPAについて >>> https://sol.kepco.jp/cppa/ (関西電力ソリューションサイト)
コーポレートPPA解説記事 >>> https://zc-biz.kepco.jp/media/learn/corporate_ppa

※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※この記事は2024年2月時点の情報に基づき作成しております。


この記事を書いたメンバー

小出 健人

和歌山県出身、趣味は家族旅行で、大学では気象学を専攻。法人のお客さま向けのソリューション企画・運営の全体総括を担当。入社当初から環境問題に興味があり、脱炭素の課題解決に使命感を持って取り組んでいる。本サイトを通して、「地球にありがとう」の気持ちを少しでも広げていけたら、と思っています。

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この記事を書いたメンバー

林 直人

愛知県出身。趣味は読書、音楽制作、ウェブデザイン、スケボー、NPOの事業支援。大阪公立大学非常勤講師。お仕事は法人営業で、お客さまの電力契約から再エネ導入、省エネ活動、新規事業共創まで幅広く活動しています。このサイトは僕たちの「こんな記事があれば、脱炭素も面白く感じられるよね」から始まりました。仕事に、ブログに、日々奮闘する関電社員の姿をご覧ください。

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