脱炭素について、お客さまの考えているリアルを聞きたいという想いから、今回はじめてゼロカーボン板でお客さまとの対談を企画させていただきました。
今回のゲストは、大松工業株式会社の松川社長です。
大松工業は輸送機器、住宅設備、放送設備など、さまざまな工業製品に利用される金属やプラスチック部品の焼付塗装が主力事業です。
インタビュアーは関西電力の土屋、なんと松川社長と10年ぶりの再会。
10年前、ヒートポンプによる電化を通じ、工場の脱炭素に駆け回っていた二人。
再会した二人の間に、どんな会話が生まれるのか。
この記事を読んでいただければ、地球環境に配慮した企業の取り組みがどのように実行されているのか、その裏側を知ることができます。
ぜひ最後までお楽しみください!
写真左 大松工業株式会社 代表取締役社長 松川長久
写真右 関西電力株式会社 ソリューション本部 法人営業第二部 エンジニアリンググループ 課長 土屋敦史
10年ぶりの再会
土屋 ご無沙汰しております!今日は、ゼロカーボン板がきっかけで、またお会いできて嬉しいです!松川さん、社長になられていたとは!
初めてお会いした時、松川さんは専務、私はまだ担当でしたね。10年経って、私も職位が上がりましたが、松川さんが社長になられていたのには驚きました。おめでとうございます!
松川 ありがとうございます。当時からあまり大きく権限が変わったことはないと思っていますが、やはり責任の大きさは感じますね。でも、当時土屋さんが提案してくれたヒートポンプの導入から、社長になった今も機械いじりが好きなので、自分でヒートポンプの配管施工や保温工事など自分で試行錯誤しながら改善しています。
土屋 当時は、生産ラインに蒸気ボイラで加温していたところに、高効率な循環加温ヒートポンプを追加するハイブリッド式給湯システムの提案をさせていただきましたね。あの当時ハイブリット給湯が新しく発売されたところだったので、そこまで普及していませんでしたが、松川さんと試行錯誤してよりよいシステムにできる検討していたのが懐かしいです。
例えば、普通であればヒートポンプで熱供給するだけで考えるのですが、温熱を作ると同時に室外機に冷風が発生することをお伝えすると、松川社長がそれであれば従業員への環境改善のために利用したいとおっしゃって室外機の場所を従業員がいらっしゃる場所へ変更したり、工夫しましたね。
松川 そうですね。今まで捨てていた冷風も活用できるものは活用する。今までとても暑い環境での作業だったので、従業員からは好評ですね。冬は寒いので避けないといけませんが・・・笑
熱い想いを語る松川社長
松川社長の脱炭素にかけるホンネ
土屋 10年前にヒートポンプ導入いただいてからは、どんな活動されているのでしょうか?
松川 ヒートポンプ導入をきっかけに、脱炭素の取り組みを色々やっています。例えば、電力使用量の見える化や製造工程の効率化をしたり、使用する電気を実質100%再生可能エネルギー由来の電力にしています。加えて、EV充電器を設置したので、ここで充電するEVは実質100%再生可能エネルギー由来の電力で走ることになります。おかげさまで、日刊工業新聞や商工会議所会報に脱炭素の取り組みを取り上げていただくことができました。
土屋 素晴らしいですね。ここまで社長が脱炭素をはじめとする環境活動を進める原動力はなんでしょうか?
松川 元々自然が大好きで、山や海で遊ぶことが多いんです。
でも、雪山へ行くとなっても、どんどん雪がなくなってきていますよね。いい雪で滑りたいのに滑れなくなってきている。海へ行くとなっても、その海水は元々、地域の工場などから出した生活用水などからきているものだったりするため、工場から出す水が汚かったらその分だけ海が汚くなると思っています。
だからこそ、自分が大松工業の社長としてできることは、少しでも会社の脱炭素につながる活動や自然環境を守る活動を行い、山や海などの自然を守ることに少しでも貢献していきたいと積極的に活動しています。
土屋 松川さん熱すぎます(笑)
松川さんが根っこから自然を守りたいという熱い想いがあるからこそ、色んなことにチャレンジしているんですね。脱炭素の本質って感じでとても素敵です!
松川社長の想いに熱くなる土屋
会社にとって脱炭素が生み出す価値とは?
土屋 脱炭素に対して、大松工業としてどんな価値に重きを置いていらっしゃいますか?
松川 脱炭素というのは、省エネとして光熱費が下がるだけでなく、収益の拡大にもつながると考えています。どうしても商売だと価格競争に走ってしまいますよね。でも、私は、価格競争だけにならないように製品に付加価値をつけることが大事だと思っています。具体的には、下記の通り8年間でCO2排出量30%の削減を達成しつつ、現在削減目標の設定や削減状況の進捗を公表するためにもSBT認定取得に向けて申請しております。今後はCFP(カーボンフットプリント)の算定を実施し、製品あたりのCO2排出量算定や削減量を開示して、CO2排出量が低い製品として提供していきたいと思っています。
大松工業株式会社のCO2排出量の推移(2024年1月19日時点)
土屋 なるほど。企業にとって脱炭素に関する取り組みは、かつてはCSR観点のものでしたが、社会からのニーズの高まりと共に今では企業価値向上のため能動的に取り組むものに変わりつつありますよね。
松川 もちろん脱炭素だけでなく、製品としての品質や技術力が大事なので、両輪で進めています。
土屋 大松工業さんのオフィスには大阪ものづくり優良企業賞など数多くの賞状やトロフィーが飾られているので技術力は折り紙付きですし、技術力や採用事例をどんどんPRしてはどうでしょうか?
松川 そうですね。実は有名なカフェに置いてある家具での採用など多数あるのですが、技術的にも商品戦略上にもオープンにできないので、なかなか伝えづらいことがネックですね。そのためPRは口コミ限定になってしまっています。
土屋 知る人ぞ知る隠れた名店みたいですね笑
でも今回お伺いして、技術力が優れている会社は他にも沢山あると思いますが、加えて脱炭素についても積極的に活動していることは非常に希少価値がでるのではと思っています。例えば、脱炭素の活動として1/100の会社であることと技術力として1/100の会社であることが別々だと1/100にしかなりませんが、大松工業さんのように両輪で優れていると掛け算の原理が働き、1/100×1/100で1/10000の会社としての価値になるんです。そうなると製品に対する付加価値も非常に大きな価値を見出せると感じました。
オフィスに掲げられていた経営理念
脱炭素のサグラダファミリア
土屋 最後に、大松工業さんとして脱炭素に関しての今後の展望はいかがでしょうか?
松川 私たちの会社の理念は、「塗装で社会を彩る」にしています。これは、塗装を単に製品を“着色する”だけの作業とは捉えず、働く人や関わる全てを豊かに“彩る”仕事だと考えております。その中で環境を豊かに彩るためには、自然を守ることが必要であり、そのために脱炭素は積極的にやっていかないといけないと思っています。その結果として、製品の付加価値がつければ製品により彩りを与えられるのかなと思っています。
そのためには、今目先できる脱炭素の活動を短期的な恩恵がなかったとしても続けていくことが必要です。
至近でいえば、ヒートポンプをもう一台別のラインに導入し、給水加温しつつ、今後は排熱を製品を冷やすための冷風として利用しています。それ以外にもまだまだ省エネしたいことが沢山ありますし、この脱炭素の活動は終わることはないと思っています。
土屋 まさに「脱炭素のサグラダファミリア」ですね。ありがとうございました。
工場外観
あとがき
関西電力の加藤です。今回、社長のホンネを生で聞きたいと手を挙げて、同行させてもらいましたので、対談を聞いて感じたことを皆さんにお伝えできればと思います。
今回お会いして感じたのは、松川社長の卓越した技術力と環境への熱意、そしてそれを支える社員の皆さんの努力。これらが融合して、大松工業の強みとなっていると感じました。そして、私たちもその一端を担うことができることを誇りに思います。
松川社長が実践している脱炭素と高い技術力の掛け算が企業の大きな強みとなり得ることが分かりました。環境問題への取り組みは、単なる企業の義務ではなく、今後SBT認証やCFPの算定など製品へ付加価値をつけることのできる新たなビジネスチャンスと成長の鍵でもあります。大松工業が地元の自然を守りながら、経営の効率化を図り、高い技術力を駆使して挑戦を続ける姿勢は、多くの企業にとっても大きなインスピレーションとなるのではないでしょうか。
また、松川社長の言葉からは、自然を愛し守りたいという強い思いが伝わってきました。その思いが、会社全体の取り組みを支え、従業員一人ひとりのモチベーションを高めています。このような熱意とビジョンを持つリーダーがいる企業は、確実に未来を切り拓いていくことでしょう。
今回の対談で、私たちがどのように環境問題に取り組むべきかを再考させてくれました。私たちもまた、環境に配慮し、持続可能な未来を目指す企業として、より多くの人々にその価値を伝えていきたいと強く感じました。この記事が少しでも皆さんの興味を引き、次の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※この記事は2024年10月時点の情報に基づき作成しております。