2022.11.24に「TCFDゼロカーボン時代の企業評価のために」という記事を公開させていただきました。
その記事の中で、TCFDの設立の背景や目的、検討の具体的手順について紹介させていただきましたが、記事掲載から1年が経過し、多くの企業の方が実際にTCFDに向き合われているのではないかと思います。
もちろん我々関西電力も同じです。
今回は、関西電力のTCFDへの対応について、エネルギー・環境企画室の今田さんにご紹介いただきます。今田さんお願いします。
*****************
はい。
私から関西電力グループの気候変動への対応について簡単に説明させていただきます。
関西電力グループは持続的な成長をとげるとともに、SDGs等のグローバルな社会課題の解決を通じて社会の持続的な発展に貢献することを目的に、ESGに関連する重要課題(マテリアリティ)を特定し、その中で「気候変動への対応」を重要課題と位置付けています。
上記考えに基づき、当社は2019年5月にTCFD提言への賛同署名を行い、以下のTCFD提言の考え方を参考に、統合報告書において、当社の気候変動への対応について情報開示を行っています。
出典:気候変動適応情報プラットフォームポータルサイト
以下、TCFD提言における開示要求事項に沿って、当社の気候変動への対応についてご説明いたします。
「1.ガバナンス」
当社は、気候変動問題を経営上の重要課題と位置づけ、各事業執行部門等の気候変動対応を、「サステナビリティ推進会議」「リスク管理委員会(2023年7月より内部統制部会)」「ゼロカーボン委員会」において評価・管理し、必要に応じて助言・指導を行っています。また、各会議体での評価・管理結果を適宜「取締役会」へ付議・報告することで、気候変動問題に対してガバナンスを効かせています。
また、業務執行を担う執行役の報酬については業績連動に応じた報酬を支給しており、業績指標として、CO2排出削減量や社外ESG評価を採用することで、経営層が率先して気候変動の取組みを推進する枠組みを構築しています。
「2.戦略」
(リスク・機会の特定)
当社グループへのインパクトが大きいと考えられる「リスク(移行リスク・物理リスク)」と「機会」を特定するとともに、それらリスク・機会の発現時期、影響度を以下の通り評価しています。
(シナリオ分析)
〇シナリオ
設定気候変動に関するリスク・機会を分析するにあたって、「気候変動の将来予測」と「当社グループへの影響度」の観点でシナリオドライバーを設定しました。
「気候変動の将来予測」では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に係る政府間パネル(IPCC)等を踏まえ、2050年にカーボンニュートラルを達成する「1.5℃(上昇)シナリオ」と、GHGを2013年から約80%削減する「2℃(上昇)シナリオ」を選定しています。※現時点から追加的な気候変動対策をとらない「4℃(上昇)シナリオ」もありますが、今後世界的に気候変動対策が促進すると考え、当社は4℃シナリオの分析は実施しておりません。
「当社グループへの影響度」では、リスク・機会の特定において当社グループへの影響度が大きいと評価した「原子力の稼働状況」と「火力のゼロカーボン技術の導入」を選定しました。
〇シナリオ分析結果
「1.5℃(上昇)シナリオ」では、電力需要は2021年と比較し、約6割増加する結果となりました。
需要側では、カーボンニュートラルを達成するため、省エネの進展および電化率の向上(26%→5 8%)が必要な結果となりました。供給側は、カーボンニュートラルを達成するため、再エネ導入の拡大が必要な結果となりました。
「2℃(上昇)シナリオ」では、電力需要は2021年と比較し、約1割増加する結果となりました。需要側では、1.5℃シナリオと比較するとGHG排出制約が厳しくないことから、電化率は約46%と緩やかに上昇する結果となりました。供給側では、1.5℃シナリオと比較するとGHG排出制約が厳しくないものの、一定の再エネが必要な結果となりました。
(財務インパクト)
上記のシナリオ分析結果を踏まえ、財務に影響を与えうる要因とそれに対する取組状況を記載しています。
(当社グループの気候変動戦略)
上記のように、当社グループは、財務に大きな影響を与えるリスクや機会ついて、「お客さまや社会の皆さまとともに取り組むこと」と、「関西電力グループ自ら取り組むこと」を着実に実施することで、「1.5℃シナリオ」および「2℃シナリオ」のいずれにおいても、レジリエンスを確保できると評価しています。
また、これらの取組みを「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」や「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」等の気候変動戦略へ適切に反映しています。
「3.リスク管理」
事業活動に伴うリスクについては、各事業執行部門が自律的に管理することを基本としつつ、組織横断的に重要とされるリスクについては、専門性を備えたリスク管理箇所が、各業務執行部門に助言・指導を行うことで、リスク管理の強化を図っています。
「4.指標と目標」
「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」実現に向け、社会全体のゼロカーボン化に向けた取組みを進めるため、当社グループは「ゼロカーボンロードマップ」において目標を設定し、足元実績では、計画に対して順調に進捗している状況です。
また、当社は、2022年3月、企業自らが積極的に脱炭素に取組み、成長できる社会を目指すことを目的としたGXリーグ基本構想に賛同いたしました。GXリーグの下、企業が自主的に設定する削減目標の達成に向けた排出量取引が2023年度より試行的に実施されることから、以下のとおりGHG削減目標を以下の通り設定し、2023年9月にGXリーグへ提出しています。
(削減目標水準)
①2023-2025年度総計 7,066(万t-CO2※)
②2025年度 2,135(万t-CO2eq)(2013年度比▲55%)
③2030年度 1,400(万t-CO2eq)( 2013年度比▲70%)
※t-Co2eq(トンCo2イクイヴァレント(equivalent))は、各種の温室効果ガスの排出量に地球温暖化係数を乗じてt-Co2相当量に換算した値に付される単位
このように、関西電力グループは、「気候変動への対応」について、TCFD提言に基づき、適切に情報開示を行っています。
詳細については、「関西電力グループ統合報告書2023 気候変動への対応・TCFD」をご覧ください。
**********
当社のTCFDへの取組み、情報開示の内容がよく分かりました。
ちなみに、今回の対応にあたって、悩んだ点や難しかった点はありますか。
一番悩んだ点は、いかに「気候変動への対応」に関する内容を充実させるかですね。投資家や金融機関の皆さまに当社グループの企業価値を適正に評価いただくには、「気候変動への対応」に関する情報を可能な限り開示するが重要だと考えており、試行錯誤を繰り返しました。
特に2022年度は、「財務インパクトが定性的な記載となっており、評価が困難」「2030年のGHG排出目標がなく、開示内容が不十分」等のご指摘を多く頂戴しましたので、2023年度は、「財務インパクトの定量化」、「2030年のGHG削減目標の開示」、等可能な範囲で情報開示に努めました。改善余地はまだあると感じており、投資家や金融機関の皆さま等のご意見も踏まえながら、今後も「気候変動への対応」に関する内容の充実に努めたいと考えています。
確かに、10年後や20年後を見据えた長期計画となると、その実効性の担保や評価も簡単ではないですよね。
各企業のご担当者も同様に悩まれる点だと感じました。
以上、今回は関西電力のTCFD対応についてご紹介させていただきました。
※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。