こんにちは。私は法人営業として電気、ガス、再エネ導入などの提案活動を行っています。
毎日、メールで「2023年度のCO2排出係数については…」なんてやり取りをしたり、「CO2削減量:●●t- CO2/年」といった提案書を書いたりしています。CO2(二酸化炭素)という言葉に触れない日はありません。
でも、ちょっと待ってください。温室効果ガスはCO2だけではありません。なぜCO2だけがこんなにも注目されるのでしょうか?
今回は、これまでCO2削減を提案してきた自分を振り返り、なぜCO2が特に重要視されるのかを深掘りしてみました。
温室効果ガスって何?
地球の表面は大気に覆われており、その中には赤外線を吸収し、一部を再び放出する性質を持つガスがあります。これらは「温室効果ガス」と呼ばれ、太陽からのエネルギーにより温められた地表面が、放射する熱を吸収・放出して、地球の気温を一定に保っています。もし温室効果ガスが全く存在しなければ、地表面から放射された熱は大気を素通りしてしまい、地球の平均気温は-19℃になると言われています。つまり、温室効果ガスは地球にとって不可欠な存在なのです。
しかし、20世紀半ば以降、世界の平均気温は上昇し続けています。その気温上昇の要因の一つとして、化石燃料の大量消費による温室効果ガスの濃度上昇が挙げられています。
※関西電力グループ WITH YOU 温室効果ガスとは?問題や種類・減らすための取り組みを解説
https://media.kepco.co.jp/study/17613804
温室効果ガスの種類
下の表1は、中学校の理科の教科書で見たことがあるかもしれません。CO2、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)など、国連気候変動枠組み条約と京都議定書で取り扱われる温室効果ガスは7種類あります。
乾燥大気の約99%以上を占める窒素、酸素、アルゴンは赤外線を吸収しないため、地球の表面を温める効果はありません。それに対し、微量ながらも温暖化に大きな影響を与えるのが温室効果ガスの特性です。
では、大気中に最も多く存在する重要な温室効果ガスは何でしょうか?それは水蒸気です。私たちが感じる地上の暖かさの多くは、水蒸気の温室効果によるものです。これも中学理科で「飽和水蒸気量」を学んだことを覚えている方も多いと思いますが、大気中の水蒸気の量は地球の気温によって左右され、温暖化が進むと大気中の湿度が上昇し、さらに温暖化が進むという連鎖が起こります。(「水蒸気の正のフィードバック」といいます)
ちなみに、温暖化により氷が融解し、惑星の反射率が低くなり、太陽光放射の吸収が増え、さらに温暖化が進む「アイス・アルベド・フィードバック」が、水蒸気フィードバックと並び重要な正のフィードバックに位置づけられています。
話を戻して、次に多いのが、今回のメインテーマであるCO2です。CO2は人間が直接影響を与える最も重要な温室効果ガスであり、現代の気候変動の主要な原因となっています。
さらに次に多いのがメタンCH4です。メタンは1kgあたりCO2の25倍の温室効果を持っています。人為的なメタン放出は農業や廃棄物処理が主な原因で、特に家畜の腸内発酵が大きな発生源となっています。
表1 温室効果ガスの特徴
※JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター HPより
https://www.jccca.org/download/13266
※地球温暖化係数とは、温室効果ガスそれぞれの温室効果の程度を示す値です。ガスそれぞれの 寿命の長さが異なることから、温室効果を見積もる期間の長さによってこの係数は変化します。ここでの数値は、京都議定書第二約束期間における値になります。
気候変動でなぜCO2がピックアップされるのか?
なぜCO2がこれほどまでに注目されるのでしょうか?その理由は主に3点あります。
1.人為的な排出量が多い
CO2の排出は、化石燃料の燃焼など人間の活動によるものが大部分を占めています。産業革命以降、急速にCO2濃度が上昇しているのは事実です。人間が直接影響を与える最も重要な温室効果ガスと言えます。
2.大気中の濃度が圧倒的に高い
CO2よりも強力な温室効果ガスは数多く存在しますが、大気中に存在する濃度が圧倒的に高いのがCO2です。CO2の濃度が高いため、全体としての温暖化への影響も非常に大きいです。つまり、CO2を削減しなければ、気候変動への本質的な対策にはなりません。
3.持続性が非常に高い
CO2は一度大気中に放出されると、数百年から千年以上も残存することが知られています。つまり、放出されているCO2の一部は、千年後も地球の温暖化に影響を与える可能性があります。今、排出を停止したとしても非常に長い間熱を閉じこめ、すぐに気温は下がりません。
また、CO2は水に溶けやすいという性質も持っています。水に溶けたCO2は炭酸(H2CO3)に変換され、さらに水と反応して他の形態に変換されます。海は熱容量が膨大なので、大量のCO2を吸収することができます。海という大量のCO2貯蔵庫がなければ、もっと大気中のCO2量が多くなり、さらに温暖になっていたという考えがある一方、海の酸性化が進み、生物環境変化といった問題につながる可能性があります。
一方、メタンは比較的短期間(約10年)で大気から除去されます。そのため、排出の削減対策を実行することにより、効果が表れるのはCO2と比較して早いでしょう。そのため、メタン排出も同時並行で対策が必要です。ただ、未来の地球環境にゆっくりと静かに影響を与えるCO2排出は脅威と言わざるを得ません。
結論
今回は温室効果ガスとCO2が注目される理由について深掘りしました。人間は差し迫った脅威に対しては即座に対応しますが、気候変動は人間にパニックを起こすほどの速いスピードでは起きてきませんでした。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)で各企業がシナリオを想定しリスクを洗い出している取り組みは加速しつつありますが、不確実性の大きな問題に対し、今即座に行動しなければならないのか多くの企業の経営者、実務担当者が悩まれていることだと思います。気候変動に対する科学的評価は、長年にわたるデータと根拠に基づいています。正しい知識を持ち、今からでも対策を取ることが重要です。
CO2削減は私たち全員にとっての使命です。未来の地球を守るために、今からできることを一緒に考え、取り組んでいきましょう!
※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※この記事は2024年11月時点の情報に基づき作成しております。