洋上風力。
次世代の再生可能エネルギーとして有望視されている技術である。
関西電力グループは洋上風力の研究に取り組んでおり、中でも注目されているのが、社内から立ち上がったスタートアップ企業・Dshiftだ。
Dshiftが取り組むのは、ドローンやAI画像解析といったDX技術による保全・点検・管理業務のイノベーション。
風力発電所は一般的にアクセス困難な場所に建設されることが多い。
Dshiftは「風力発電所の現場」と遠く離れた「オフィス」を繋ぎ、設備の安全性向上と最適化・効率化を目指している。
そんな気鋭のスタートアップを先頭に立って引っ張るのが、代表の角田恵。
ゼロカーボンに欠かせない再生可能エネルギー、中でも今後の発展が期待される風力発電について、最前線の知見を聞いた。
![Dshift 角田](/dcms_media/image/1_offshore_wind_power.jpg)
角田恵 (すみだ めぐみ)
1986年、関西電力入社。水力事業本部、土木建築室を経て、2021年より現職。趣味はスキーと、撮り溜めた録画の鑑賞。
—— 洋上風力について教えてください。まず、そもそも陸上と洋上の違いはなんですか。
角田 陸にあるか、海にあるかの違いです。
にっこり
![](/dcms_media/image/2_offshore_wind_power.jpg)
—— なるほど、わかりやすいですね。これで取材を終わります。ありがとうございました。
角田 ちょ、ちょっと待ってください。もう少し…
—— はい。
角田 陸上風力は昔から日本にも導入されてきた手法で、比較的「作りやすい」ことが長所です。
ただ、大きなものになると建設が厳しいんですね。
陸上風力は風況の良い山の上に作られることが多く、道が狭いという制約があります。
—— 建設地までの道が狭いと何か困ることがあるんですか。
角田 風力の羽、ブレードと呼ばれる部材は、現場では作れません。
なので、工場で作った1本モノを運搬するのですが、これがとても大きい。
数十メートルぐらいのものを運ばなければならないんです。
—— えっ!風車の羽って、あのまま運んでいたんですか!
陸上風力は建設のアプローチ上の制約があって、大きなものが作れない、と。
角田 洋上風力はこの制約がクリアされます。
ブレード工場から建設地まで船で運搬できます。
なので、100メートルクラスのブレードも運べちゃいます。
—— 100メートルとなると、陸上では厳しいということですか。
角田 このクラスは陸上では運べません。
風力発電の出力は概ねブレードの大きさに相関します。
したがって、洋上風力は陸上よりも大きな発電所にできます。
スケールメリットにより投資効果も向上します。
![洋上風力と陸上風力](/dcms_media/image/2_offshore_or_onshore.png)
洋上風力と陸上風力
—— 洋上風力は良いことばかりじゃないですか!
あれ。でも、陸上風力で海辺に建設されているものもありますよね。
角田 海辺でも、景観面、騒音面への配慮が必要です。
なので、人があまりいない場所に作らざるを得ず、アクセスの良い場所には作れない。
アプローチが厳しいことには変わりません。
—— そうか。同じ再エネでも太陽光と違い、風力の「音」は課題なんですね。
角田 実際、風車に近づくと風切り音が聞こえます。
—— ところで洋上風力って、海に浮かんでいるんですか。
角田 着床式と浮体式の2種類があります。
着床式は比較的浅瀬で用いられる手法で、ポストなどを打って固定させます。
一方、浮体式は文字どおり海に浮かんでいます。
—— 浮体式は浮かんでいる…。
ということは、どこかに流れていっちゃったりして。はっはっは、そんなことはないか。
角田 流れていっちゃいますね。
遠い目
![](/dcms_media/image/3_offshore_wind_power.jpg)
—— そんなアホな!!
あ、いや、すいません。えっ?マジで??あの、本当に???
角田 海底地盤にアンカーを打って固定はするものの、どうしても動いちゃいますよ。
船の上に風車が乗っている絵を想像してもらえると近いです。
アンカーを打っても、船は多少は動くでしょう。
—— そうなんですね…。
「風車がどこか行っちゃった~」とはならないまでも、動くとはビックリです。
角田 位置については、「昨日ここにあったけど、今日はここにある」というのを許容するのが浮体式の考え方です。
—— 話は変わりますが、洋上風力は日本よりも欧州が先を行っていると聞きます。
なぜでしょうか。
角田 う~ん、色々な背景があると思うので一概に言えないですが…。
背景のひとつとして、欧州は昔から再エネへの意識や、投資が活発ということが大きいと思うんですね。
水力は開発し尽してしまった、太陽光は夜には発電できない。
では、安定的な電力を得る手段として風力…という考え方は合理的です。
—— なるほど。一方で、日本の場合は太陽光に大きくシフトした印象がありますね。
日本に比べて欧州の方が風力発電が有利なんでしょうか。
角田 欧州の方が風況は安定しているといいますね。
偏西風が風向・風量とも安定的に吹いているので。
日本は季節によって変わりますし、台風もありますし。
—— 台風の時なんて、めちゃくちゃ発電できそうだから有利では。
角田 いや、台風の時は停止します。
—— なんで!もったいない!!!気合い入れて発電せんかい!!!
(机をドン!!!!)
角田 保安上、動かすと危険な場合もあるんですよ。
一定以上の風速になると、保安停止する仕様です。
回転数が上がり過ぎて、発電機側の負荷が過大になって危ない、なんてこともあり得ます。
安全は最優先されるべきです。
—— すいませんでした。
角田 けれど、日本に不利なことばかりではないですよ。
洋上風力にはメンテナンスの課題があって、海の上なので日常点検すら難しい。
よって、ドローンによる無人点検が有望になります。
洋上風力は港から遠く、肉眼で見えない場所までドローンを飛ばす必要があります。
—— なるほど、人間が点検するのは非効率だからドローンを飛ばすと。
でも、それがどうして日本にとって有利にはたらくんですか。
角田 日本ではドローンを目視外の距離まで運行することが可能なんです。
陸上のオペレーターがカメラ映像をモニタリングできれば良い。
逆に、欧州では目視外航行の規制が厳しいと聞きます。
今後、洋上風力の運用面で日本が有利になる可能性はあります。
—— おおっ!ドローン点検では日本の方が有利なんて意外な発見です!
なるほど、そこで ドローン を扱っている Dshift の出番なんですね。
角田 そうなんです!やっと会社のことが話せますね。私たちDshiftは…
—— ところで!ガタッ
突然、席を立つインタビュアーの井伊
![](/dcms_media/image/4_offshore_wind_power.jpg)
角田 えっ。はい。
—— 今さらですが、僕、風力発電を見たことないんです。
角田 はあ。
—— 風力発電って、こんな感じですか?
![](/dcms_media/image/5_offshore_wind_power.jpg)
角田 …。
—— すいません、ふざけすぎました。
角田 こ う で す !!
![](/dcms_media/image/6_offshore_wind_power.jpg)
ノリの良い角田社長。
今回話せなかったDshiftの提供するDX技術については、また改めてご紹介します。
※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※感染症対策を十分考慮した上、撮影時のみマスクを外して撮影しています。
※この記事は2022年10月時点の情報に基づき作成しております。
次世代の再生可能エネルギーとして有望視されている技術である。
関西電力グループは洋上風力の研究に取り組んでおり、中でも注目されているのが、社内から立ち上がったスタートアップ企業・Dshiftだ。
Dshiftが取り組むのは、ドローンやAI画像解析といったDX技術による保全・点検・管理業務のイノベーション。
風力発電所は一般的にアクセス困難な場所に建設されることが多い。
Dshiftは「風力発電所の現場」と遠く離れた「オフィス」を繋ぎ、設備の安全性向上と最適化・効率化を目指している。
そんな気鋭のスタートアップを先頭に立って引っ張るのが、代表の角田恵。
ゼロカーボンに欠かせない再生可能エネルギー、中でも今後の発展が期待される風力発電について、最前線の知見を聞いた。
![Dshift 角田](/dcms_media/image/1_offshore_wind_power.jpg)
角田恵 (すみだ めぐみ)
1986年、関西電力入社。水力事業本部、土木建築室を経て、2021年より現職。趣味はスキーと、撮り溜めた録画の鑑賞。
—— 洋上風力について教えてください。まず、そもそも陸上と洋上の違いはなんですか。
角田 陸にあるか、海にあるかの違いです。
にっこり
![](/dcms_media/image/2_offshore_wind_power.jpg)
—— なるほど、わかりやすいですね。これで取材を終わります。ありがとうございました。
角田 ちょ、ちょっと待ってください。もう少し…
—— はい。
角田 陸上風力は昔から日本にも導入されてきた手法で、比較的「作りやすい」ことが長所です。
ただ、大きなものになると建設が厳しいんですね。
陸上風力は風況の良い山の上に作られることが多く、道が狭いという制約があります。
—— 建設地までの道が狭いと何か困ることがあるんですか。
角田 風力の羽、ブレードと呼ばれる部材は、現場では作れません。
なので、工場で作った1本モノを運搬するのですが、これがとても大きい。
数十メートルぐらいのものを運ばなければならないんです。
—— えっ!風車の羽って、あのまま運んでいたんですか!
陸上風力は建設のアプローチ上の制約があって、大きなものが作れない、と。
角田 洋上風力はこの制約がクリアされます。
ブレード工場から建設地まで船で運搬できます。
なので、100メートルクラスのブレードも運べちゃいます。
—— 100メートルとなると、陸上では厳しいということですか。
角田 このクラスは陸上では運べません。
風力発電の出力は概ねブレードの大きさに相関します。
したがって、洋上風力は陸上よりも大きな発電所にできます。
スケールメリットにより投資効果も向上します。
![洋上風力と陸上風力](/dcms_media/image/2_offshore_or_onshore.png)
洋上風力と陸上風力
—— 洋上風力は良いことばかりじゃないですか!
あれ。でも、陸上風力で海辺に建設されているものもありますよね。
角田 海辺でも、景観面、騒音面への配慮が必要です。
なので、人があまりいない場所に作らざるを得ず、アクセスの良い場所には作れない。
アプローチが厳しいことには変わりません。
—— そうか。同じ再エネでも太陽光と違い、風力の「音」は課題なんですね。
角田 実際、風車に近づくと風切り音が聞こえます。
—— ところで洋上風力って、海に浮かんでいるんですか。
角田 着床式と浮体式の2種類があります。
着床式は比較的浅瀬で用いられる手法で、ポストなどを打って固定させます。
一方、浮体式は文字どおり海に浮かんでいます。
—— 浮体式は浮かんでいる…。
ということは、どこかに流れていっちゃったりして。はっはっは、そんなことはないか。
角田 流れていっちゃいますね。
遠い目
![](/dcms_media/image/3_offshore_wind_power.jpg)
—— そんなアホな!!
あ、いや、すいません。えっ?マジで??あの、本当に???
角田 海底地盤にアンカーを打って固定はするものの、どうしても動いちゃいますよ。
船の上に風車が乗っている絵を想像してもらえると近いです。
アンカーを打っても、船は多少は動くでしょう。
—— そうなんですね…。
「風車がどこか行っちゃった~」とはならないまでも、動くとはビックリです。
角田 位置については、「昨日ここにあったけど、今日はここにある」というのを許容するのが浮体式の考え方です。
—— 話は変わりますが、洋上風力は日本よりも欧州が先を行っていると聞きます。
なぜでしょうか。
角田 う~ん、色々な背景があると思うので一概に言えないですが…。
背景のひとつとして、欧州は昔から再エネへの意識や、投資が活発ということが大きいと思うんですね。
水力は開発し尽してしまった、太陽光は夜には発電できない。
では、安定的な電力を得る手段として風力…という考え方は合理的です。
—— なるほど。一方で、日本の場合は太陽光に大きくシフトした印象がありますね。
日本に比べて欧州の方が風力発電が有利なんでしょうか。
角田 欧州の方が風況は安定しているといいますね。
偏西風が風向・風量とも安定的に吹いているので。
日本は季節によって変わりますし、台風もありますし。
—— 台風の時なんて、めちゃくちゃ発電できそうだから有利では。
角田 いや、台風の時は停止します。
—— なんで!もったいない!!!気合い入れて発電せんかい!!!
(机をドン!!!!)
角田 保安上、動かすと危険な場合もあるんですよ。
一定以上の風速になると、保安停止する仕様です。
回転数が上がり過ぎて、発電機側の負荷が過大になって危ない、なんてこともあり得ます。
安全は最優先されるべきです。
—— すいませんでした。
角田 けれど、日本に不利なことばかりではないですよ。
洋上風力にはメンテナンスの課題があって、海の上なので日常点検すら難しい。
よって、ドローンによる無人点検が有望になります。
洋上風力は港から遠く、肉眼で見えない場所までドローンを飛ばす必要があります。
—— なるほど、人間が点検するのは非効率だからドローンを飛ばすと。
でも、それがどうして日本にとって有利にはたらくんですか。
角田 日本ではドローンを目視外の距離まで運行することが可能なんです。
陸上のオペレーターがカメラ映像をモニタリングできれば良い。
逆に、欧州では目視外航行の規制が厳しいと聞きます。
今後、洋上風力の運用面で日本が有利になる可能性はあります。
—— おおっ!ドローン点検では日本の方が有利なんて意外な発見です!
なるほど、そこで ドローン を扱っている Dshift の出番なんですね。
角田 そうなんです!やっと会社のことが話せますね。私たちDshiftは…
—— ところで!ガタッ
突然、席を立つインタビュアーの井伊
![](/dcms_media/image/4_offshore_wind_power.jpg)
角田 えっ。はい。
—— 今さらですが、僕、風力発電を見たことないんです。
角田 はあ。
—— 風力発電って、こんな感じですか?
![](/dcms_media/image/5_offshore_wind_power.jpg)
角田 …。
—— すいません、ふざけすぎました。
角田 こ う で す !!
![](/dcms_media/image/6_offshore_wind_power.jpg)
ノリの良い角田社長。
今回話せなかったDshiftの提供するDX技術については、また改めてご紹介します。
※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※感染症対策を十分考慮した上、撮影時のみマスクを外して撮影しています。
※この記事は2022年10月時点の情報に基づき作成しております。