アワリーマッチング実現への挑戦

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最近、「アワリーマッチング(Hourly Matching」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
これは国際ルールの変化
を背景とした、脱炭素評価の大きな転換とみなされています。
今後、脱炭素ルールの変化にどう対応していくのか、見ていきましょう。

目次
  1. なぜ今、アワリーマッチングなのか
  2. 関西電力でのアワリーマッチング実証
  3. 参照した国際基準:Granular Certificate Scheme Standard v2
  4. 3パターンの構成手法
  5. 二重主張を防ぐためのブロックチェーン活用
  6. おわりに
 

1. なぜ今、アワリーマッチングなのか

アワリーマッチングが注目される最大の理由は、GHGプロトコル(温室効果ガス排出量算定の国際基準)改定に向けた議論です。
これまで多くの企業は、下記の二つの要素を対応させることで「再生可能エネルギーを使用している」と説明してきました。

・年間の電力消費量
・年間で購入・償却した再エネ証書(非化石証書、再エネ由来(電力)Jクレジットなど)

しかし現在はその電力を「使った時間」に、本当にクリーンな電源が動いていたのかという、時間軸まで含めた整合性が問われ始めています。
この時間軸を含めた整合性をアワリーマッチングといいます。
年間すべての時間軸でアワリーマッチング達成を目指す枠組みは、24/7 CFECarbon Free Energy)と呼ばれています。


*参考:hourly matching|アップデートされる脱炭素のルール

 

2. 関西電力でのアワリーマッチング実証

この国際的な動きを見据え、関西電力では2025年からアワリーマッチングの実証に取り組んでいます。

■プレスリリース
JR西日本とのコーポレートPPAを活用したアワリーマッチングシステムの実証開始 
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250326_2j.pdf

日清食品とのコーポレートPPAおよびアワリーマッチングシステムの実証の実施

https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250526_1j.pdf


ポイントは以下です。

・再エネ電源の発電データと需要データを時間単位(1時間以下)で突き合わせる
・年次では見えなかった時間帯ごとのCO2排出係数を可視化
・将来の制度化・国際開示を見据えた実務検証

この実証では、単なる机上の検討ではなく、実際に「現在の日本の電力システムでアワリーマッチングをどう実装できるのか」を確かめることを目的としています。

なお、本実証については日経GXにて詳細が記事化されていますので、そちらもご参考ください。


*日経GX記事(外部サイト)>>関西電力、ブロックチェーンで再エネ需給管理 24/7対応

 

3. 参照した国際標準:Granular Certificate Scheme Standard v2

この実証を進めるにあたり、大きな拠り所となったのがEnergyTag が策定する「Granular Certificate Scheme Standard Version 2」です。

ここには、

・時間粒度(1時間以下)での電力属性管理
・再エネ証書(EAC)との関係整理
・二重主張(Double Counting / Double Claim)の防止といった論点が体系的に整理されています。

しかし…

全文英語、60ページ超。理解するのはなかなか、いや、非常に大変。

という現実が待っていました。

それでも、海外ではどこまで本気で考えられているのか、日本で実証するならどこに注意すべきかを理解するうえで、避けて通れない道でした。

大丈夫…おれたちにはchatGPTがいるッ…

4. 3パターンの構成手法

この中で特に重要なのが、アワリーマッチングの証明(GC; Granular Certificate)の3パターンの構成手法です。

Config #1:既存の証書制度そのものを時間粒度化
Config #2:既存制度を補完する形でGCを流通
Config #3償却済み証書をベースに、非流通のGCを生成

理想形は Config #1 ですが、日本の制度や実務環境を考えると、

・制度改正が前提になる
・関係者が非常に多い
・実証としてはハードルが高いという課題がありました。

今回の実証では、Config#3(償却済み証書ベース型)を採用しています。
理由はシンプルです。

・日本の非化石証書制度を一切変更しない
・非化石価値は従来どおり償却
・そのうえで、時間別の発電データを紐づけて検証

つまり、「制度は年次、説明は時間別」という二層構造を取ることで、二重主張を起こさずに、アワリーマッチングを検証できると考えたからです。

Config#3で生成されるGCは、

・発行と同時に無効化
・売買・移転不可
・特定の需要家にのみ帰属

という性質を持ち、市場取引ではなく証跡、つまり「エビデンス」として機能します。

Config#3の概要。なるほど、わからん。
(Granular Certificate Scheme Standard v2より)

 

5. 二重主張を防ぐためのブロックチェーン活用

アワリーマッチングで最も重要なのは、「二重主張が起きていないか」を第三者が確認できることです。
すなわち、ダブルカウントの防止が措置されているかです。

今回の実証では、その信頼性を高めるためにブロックチェーン技術を採用しています。
アワリーマッチングでは、以下のデータを蓄積します。

・時間別の発電量
・時刻別の電力消費量
・アワリーマッチング結果

これらをブロックチェーン技術により改ざん困難な形で記録することで、同じ価値が二度使われていないか、後から履歴を追跡できるかを技術的に担保しています。


 

6. おわりに

アワリーマッチングは必要性が高まっていますが、我が国ではまだ制度が整っていないのが現状です。
だからこそ、「制度が整っていないからできない」ではなく、「制度を尊重しつつ、どこまで先行的に検証できるか」だと考え、実証にチャレンジしました。

今後、GHGプロトコルの議論や国内制度がどう進化していくのか。この実証が一つの参考事例になればと考えています。

 

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※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※この記事は2026年1月時点の情報に基づき作成しております。


この記事を書いたメンバー

林 直人

コーポレートPPAの組成を中心に、国内企業の再エネ調達・脱炭素計画の実行支援に従事。現在はE-Flow合同会社にて、系統用蓄電池や再エネ併設蓄電池のプロジェクト組成、開発、運用を統括。大阪公立大学非常勤講師。
趣味は読書、音楽制作、映像制作、ウェブデザイン、建築探訪、まちあるき。「ゼロカーボンをもっと身近に」をモットーに、取材、執筆、時にはラップに邁進中。

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