最近、「アワリーマッチング(Hourly Matching)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
これは国際ルールの変化を背景とした、脱炭素評価の大きな転換とみなされています。
今後、脱炭素ルールの変化にどう対応していくのか、見ていきましょう。
アワリーマッチングが注目される最大の理由は、GHGプロトコル(温室効果ガス排出量算定の国際基準)改定に向けた議論です。
これまで多くの企業は、下記の二つの要素を対応させることで「再生可能エネルギーを使用している」と説明してきました。
・年間の電力消費量
・年間で購入・償却した再エネ証書(非化石証書、再エネ由来(電力)Jクレジットなど)
しかし現在はその電力を「使った時間」に、本当にクリーンな電源が動いていたのかという、時間軸まで含めた整合性が問われ始めています。
この時間軸を含めた整合性をアワリーマッチングといいます。
年間すべての時間軸でアワリーマッチング達成を目指す枠組みは、24/7 CFE(Carbon Free Energy)と呼ばれています。
*参考:hourly matching|アップデートされる脱炭素のルール
この国際的な動きを見据え、関西電力では2025年からアワリーマッチングの実証に取り組んでいます。
■プレスリリース
JR西日本とのコーポレートPPAを活用したアワリーマッチングシステムの実証開始
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250326_2j.pdf
日清食品とのコーポレートPPAおよびアワリーマッチングシステムの実証の実施
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250526_1j.pdf
ポイントは以下です。
・再エネ電源の発電データと需要データを時間単位(1時間以下)で突き合わせる
・年次では見えなかった時間帯ごとのCO2排出係数を可視化
・将来の制度化・国際開示を見据えた実務検証
この実証を進めるにあたり、大きな拠り所となったのがEnergyTag が策定する「Granular Certificate Scheme Standard Version 2」です。
ここには、
・時間粒度(1時間以下)での電力属性管理
・再エネ証書(EAC)との関係整理
・二重主張(Double Counting / Double Claim)の防止といった論点が体系的に整理されています。
しかし…
全文英語、60ページ超。理解するのはなかなか、いや、非常に大変。
という現実が待っていました。
それでも、海外ではどこまで本気で考えられているのか、日本で実証するならどこに注意すべきかを理解するうえで、避けて通れない道でした。
大丈夫…おれたちにはchatGPTがいるッ…
この中で特に重要なのが、アワリーマッチングの証明(GC; Granular Certificate)の3パターンの構成手法です。
・Config #1:既存の証書制度そのものを時間粒度化
・Config #2:既存制度を補完する形でGCを流通
・Config #3:償却済み証書をベースに、非流通のGCを生成
理想形は Config #1 ですが、日本の制度や実務環境を考えると、
・制度改正が前提になる
・関係者が非常に多い
・実証としてはハードルが高いという課題がありました。
今回の実証では、Config#3(償却済み証書ベース型)を採用しています。
理由はシンプルです。
・日本の非化石証書制度を一切変更しない
・非化石価値は従来どおり償却
・そのうえで、時間別の発電データを紐づけて検証
つまり、「制度は年次、説明は時間別」という二層構造を取ることで、二重主張を起こさずに、アワリーマッチングを検証できると考えたからです。
Config#3で生成されるGCは、
・発行と同時に無効化
・売買・移転不可
・特定の需要家にのみ帰属
という性質を持ち、市場取引ではなく証跡、つまり「エビデンス」として機能します。
Config#3の概要。なるほど、わからん。
(Granular Certificate Scheme Standard v2より)
アワリーマッチングは必要性が高まっていますが、我が国ではまだ制度が整っていないのが現状です。
だからこそ、「制度が整っていないからできない」ではなく、「制度を尊重しつつ、どこまで先行的に検証できるか」だと考え、実証にチャレンジしました。
今後、GHGプロトコルの議論や国内制度がどう進化していくのか。この実証が一つの参考事例になればと考えています。
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