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学びたい!

脱炭素に向けた取組みのイロハ ~ゼロカーボンパッケージ~

記事公開日:2022/06/05 最終更新日:2023/09/20
脱炭素への取り組みが世界的に進むなか、「脱炭素といっても、まず何から手をつけるべきか分からない」「脱炭素に向けた組織体制や目標は作ったものの、具体的な取組み内容が定まらない」といったお悩みを持つ企業さまは多いのではないでしょうか。

我々は、そういったお客さまと是非一緒に脱炭素にチャレンジしていきたく、今回、“脱炭素に向けた取組みのイロハ”として知っておいていただきたい内容、およびそのようなお客さまと共に歩む当社のソリューション『ゼロカーボンパッケージ』についてご紹介したいと思います。



1. はじめに

2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。また、その中間として2030年までに、温室効果ガスを2013年比で46%削減することも表明されております。同様の動きは先行する欧州から世界中に広がっており、それに伴い、グローバル企業を中心に、自社だけでないサプライチェーン全体を含めたカーボンニュートラルを目指す動きが広まっております。国内でも、国際的に展開する企業を中心に、サプライチェーン全体に脱炭素の取組みを要求する企業が増えてきております。
 個人の消費者にも、製品やサービス購入の判断基準として、品質や価格だけでなく、社会の持続可能性への影響を重視する傾向が高まっているようで、「サステナブルな商品にプレミアムを支払う」人の割合(60か国3万人を対象とした調査)は、2013年50%から2015年66%と高まっています(出典:環境省 「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック」)。

 このように、企業が脱炭素に取り組む重要性は高まっており、皆さまの理解も進んでいると思いますが、では具体的に何をしたらいいの?という点ではまだまだ試行錯誤段階のお客さまも多いのではないかと推察しております。
 そういった中で注目されているのが、TCFDの枠組みに沿った情報開示です。TCFDとは気候変動に関連する対応等を開示するための枠組みであり、以下のような項目について開示することが推奨されています。

・ガバナンス(Governance)
   ⇒どのような体制で気候変動への対応を検討し、それを企業経営に反映しているか。

・戦略(Strategy)

   ⇒気候変動が短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか。またそれについてどう考えているか。

・リスク管理(Risk Management)

   ⇒気候変動のリスクについて、どのように特定、評価し、またそれを低減しようとしているか。

・指標と目標(Metrics and Targets)

    ⇒リスクと機会の評価について、どのような指標を用いて判断し、目標への進捗度を評価しているか。

この枠組みに沿った情報開示については、様々なコンサル会社が支援されており、徐々に進みつつあるようですが、あくまで情報開示の要素が強く、目標は定めたものの、では具体的にどういう計画で、どういう方策で温室効果ガスを削減していくのか、その第一歩、イロハについてお悩みのお客さまも多いのではないでしょうか。

 私ども関西電力にも、
 「2030年に現状比で▲〇〇%という目標だけ定めたものの、実現可能なレベルなのか?」
 「経営層から『やれ、やれ』と言われるが、まず何から手をつければよいのか?」
というようなお悩みの声がお客さまから多く寄せられております。
 関西電力グループでは、従来から培ってきたエネルギーマネジメントをはじめとした知見を最大限に活用し、お客さまの「脱炭素に向けた取組みのイロハ」をご支援させていただいており、本日はその概要を、分かりやすく解説させていただきます。

2. 脱炭素に向けた取組みのイロハ

脱炭素に向けては、脱炭素に向けては、イ. 現状の把握ロ. 削減方策の洗い出し と 削減ポテンシャルの把握ハ. 費用対効果を意識した優先順位付け の3つのステップで整理することで、お客さまが具体的に取り組むべき事項(=ゼロカーボン化に向けたロードマップ)を明確にすることができます。

3.【イ】現状の把握

プライベートでダイエットを始める際、まずはご自身の今の体重を確認するところから始めますよね?
脱炭素の取組みにおいても同様で、まずはお客さま自身の現状の温室効果ガス排出状況を正しく把握することが重要です。
 例えば、電気やガス、その他エネルギーの各月の使用状況を集約することで、現状のCO2排出量を把握することができます。省エネ法の定期報告書の作成に際して、エネルギー種別ごとの使用量を集約されている場合は、各使用量に各CO2排出係数を掛けたものが、現状の排出量に該当します。
 既に実施されているお客さまも多いと思いますが、各拠点別・エネルギー種別の排出量をグラフ化(視覚化)することで、現状を俯瞰的に捉えることができ、重点的に対策すべき拠点が見えてくるので、非常に重要なステップだと考えています。当社にご相談いただくお客さまも、このように「見える化」できたこと自体を喜んでいただけることも多々あります。
なお、最近では自社での排出に加えて、SCOPE3というサプライチェーン全体における排出量を把握していく、という潮流も世界基準になりつつあります。(SCOPE3に関しては今回の主題ではないので別の機会に・・・)


4.【ロ】削減方策の洗い出しと削減ポテンシャルの把握

次のステップでは、上記で把握した現状に対して、どのような削減方策が考えられて、それぞれどの程度の削減ポテンシャルがあるのかを把握していきます。プライベートでのダイエットの際に、食習慣の改善、運動・ストレッチ等、取組み項目をリストアップする、という行為に似ています。ここでは、方策一つ一つを精緻に検討できずとも、あくまでポテンシャルとして、どのような取組みの効果が大きいか、方向性を見極めていくことが重要だと思います。

 関西電力では、削減方策を3つのキーワードと4つのカテゴリに分解して検討していくことが有効であると考えています。具体的には「減らす(①省エネ)」「創る(②創エネ)」「置き換える(③電気転換、④オフセット)」です。順番に見ていきましょう。

イメージ図.jpg

① 省エネ(減らす)
まず、①省エネでは既存の設備をより効率的に運用することで実現できる削減方策とその定量効果を洗い出します。いわゆる、エネルギーマネジメントと呼ばれるものですね。
「空調の設定温度を緩和する」「照明はこまめに切る」等の従業員の省エネ行動の定着や、空調設備の省エネ制御、ポンプのインバータ化など制御装置を導入して省エネ・省CO2を実現、等が該当します。
既に取り組まれている方策も多く、しばしば「絞り切った雑巾」と例えられますが、投資や追加費用をほとんどかけずに取り組める項目ですので、今一度項目を洗い出すことは重要です。

② 創エネ(創る)
続いて、②創エネでは、太陽光などの再生可能エネルギーをどの程度活用できるか、ということを検討します。太陽光発電所建設、と聞くとハードルが高く感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、お客さまの各施設の屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電気をその施設で使う(いわゆる自家消費型と呼ばれます)スタイルは、ここ数年で急速に広がっております。また、屋根だけでなく、保有している空き地に太陽光パネルを設置して発電した電気を活用する(一例として自己託送と呼ばれるものがあります)仕組みも広がりつつあり、これらも含めて、今後より一層スタンダードになっていくものと想定されております。
創エネによる削減ポテンシャルは、各拠点の屋根面積や建物構造、空き地からどの程度太陽光を設置可能か、そこから年間の発電量を想定し、発電した分は電力会社から購入する電力量を削減できるとして、CO2削減の定量効果を算出します。

③ 電気転換(置き換える)
上記の①②で目標に対して十分な削減ポテンシャルがある場合はいいですが、実際は①は「絞り切った雑巾」、②は使用エネルギー全体の1~2割程度というケースも多いです。そこで、「置き換える」の視点が必要となります。
電気転換においては、化石燃料を利用している設備を「よりCO2排出量の少ない電気機器」に置き換えることになります。一般的に電気エネルギーの方がCO2排出を低減できる傾向にあるとともに、電気の利用比率を高めておくことで、②創エネや④オフセットによる削減の選択肢が広がります。この項目は設備投資を伴いますので、既存設備の経年なども見極めた計画的な実施が必要となりますが、最新の高効率な設備に置き換えるため、削減ポテンシャルは大きくなります。

④ オフセット(置き換える)
ここまでお示しした①②③による削減ポテンシャルと、お客さまの削減目標を比べて、そのギャップを、CO2フリーメニュー等を用いて④オフセットによって埋める形が王道と言えます。

5.【ハ】費用対効果を意識した、各方策の優先順位付け

ロのステップでお示しした、各削減方策には費用がかかるものが多いため、費用対効果の観点から優先順位を付けて取り組んでいく必要があります。先ほども触れましたが、従業員の省エネ行動、などの省エネにかかる費用は限定的ですが、③電気転換で新たに設備を導入する場合は、大きな投資が必要となります。
追加費用や投資がかかるものに関しては、費用対効果が高いものから取り組むのが一般的です。費用対効果や投資判断の基準については、お客さまで固有のものがあると思いますので、それに照らし合わせて取組みの是非および優先順位を検討していくことになります。
昨今、投資判断においては、削減コストだけで評価するのではなく、削減されるCO2もコスト換算して評価する「インターナルカーボンプライシング」という考え方を導入する企業も増えており、CO2削減に寄与する投資をより高く評価しようという風潮になってきております。
各削減方策を組み合わせて、どういう期間をかけて、どういう優先順位で対策を実施していくか、それを示したものがロードマップと呼ばれ、これを作成することが脱炭素の具体的取組みの第一歩と言えるのではないかと考えています。


6. 関西電力のゼロカーボンパッケージ

関西電力では、これまでお話してきたような各削減方策、例えば①省エネ=空調最適制御サービス、②創エネ=太陽光発電オンサイトサービス・・・等々、数多くの方策を積極的にご提供してまいりました。

しかし、いわゆるサービスのバラ売りの状態のままで、
「脱炭素の取組みに、何から手を付けるべきか分からない」
「提案された方策を、すぐに採用することが本当に最適なのか?」
といったお客さまの根本的なお悩みに本当に寄り添えているのだろうか・・・

私は、法人のお客さま向けのソリューション企画・運営の全体総括をしている立場として、よりお客さまに寄り添える関電でありたいと考え、2章でお示ししたような「脱炭素の取組みのイロハ」からお客さまのお手伝いをさせていただく、『ゼロカーボンパッケージ』を2022年1月にリリースいたしました。

100件のお客さまがいれば、100通りの脱炭素の取組みがあるはずで、お客さまにとって最適な取組みを計画(ロードマップ策定)~削減方策の実行までカスタマイズしてご提供していく、そのような活動を目指しております。とは言え、我々もまだまだ勉強中です。ゼロカーボンの実現に向けて、お客さまとご一緒にチャレンジしていきたいと考えております。
是非、お気軽にお声掛けください!

※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。
※この記事は2022年6月時点の情報に基づき作成しております。

編集後記:この記事を読んだ若手社員のコメント

和田 知奈美

和田 知奈美

私自身、これまで省エネのご提案を積み重ねてきましたが、「脱炭素」という壮大な課題に対しては、お客さまと同じスタートラインです。お客さま課題、ひいては社会課題の解決に向け、「お客さまに寄り添う姿勢」で、お客さまと共に悩み、考え、成長していきたいと思いました。

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この記事を書いたメンバー

小出 健人

小出 健人

和歌山県出身、趣味は家族旅行で、大学では気象学を専攻。法人のお客さま向けのソリューション企画・運営の全体総括を担当。入社当初から環境問題に興味があり、脱炭素の課題解決に使命感を持って取り組んでいる。本サイトを通して、「地球にありがとう」の気持ちを少しでも広げていけたら、と思っています。

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この記事の情報

脱炭素に向けた取組みのイロハ ~ゼロカーボンパッケージ~

記事公開日:2022/06/05 最終更新日:2023/09/20

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