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学びたい!

等身大のゼロカーボン ~最初に取り組むべき4つのアクション~

記事公開日:2022/08/16
私はエネルギー戦略コンサルタントとして、工場を中心とした産業分野のお客さまへゼロカーボンに向けたロードマップの策定やCO2削減ポテンシャルの調査、再エネの導入、具体的な省エネ施策の立案サポートなどを担当しています。

これまで、関西電力へのコンサルティングのご要望は、エネルギーに関するコスト削減の意識が強かった傾向がありますが、2020年10月、当時の菅内閣総理大臣による2050年ゼロカーボン、脱炭素社会実現の目標を宣言して以降は環境が激変しました。今では、お客さまから”投資が必要でも、継続的かつ大規模なCO2削減につながる取り組み“のご要望を多くいただくようになっています。

特に、奮闘されておられるのが、企業の屋台骨を支える本社を中心とした管理職の皆様です。「経営ビジョンでゼロカーボンが掲げられ、実務者が具体的な検討をしていく。けれど、社内にはスキルもマンパワーも足りていない。」そんなお悩みをよく耳にします。

また、脱炭素に向けた具体的な施策の検討を行う以前の問題として、企業内のルール・制度が整理されていないことが原因で、早期に取り組むべき検討がうまく進まず、活動が停滞してしまっている場面にも遭遇します。

このように、これまで出会った脱炭素活動の課題は大きく2点に集約されると考えています。
(1)社内のノウハウが不足している
(2)脱炭素投資や効果の評価ルール・制度が定まっていない

そこで、実際のお客さまの声に基づく等身大のお悩みを例として挙げつつ、これらの課題を解決するため、”ゼロカーボンに向けて、最初に取り組むべき4つのアクション”を取り纏めました。

― うちの会社は、まだまだ先の話だから・・・

このような言葉が頭に浮かんだ企業のご担当者の方にこそ読んでいただき、CO2削減の取り組みを始める必要に迫られた時、焦ることなく、すぐに行動を開始できる一助となれば幸いです。


1.企業意識の改革~新しい社内メッセージを発信する~

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■コンサルティングで出会ったお客さまの声

― 関西電力では、どんな省エネをご提案してくれますか?まずは、投資を必要としない施策のみ検討を進めていきたい。(事業所 エネルギー管理部門)

投資を必要としない施策のみを要望される背景としては、これまで本社から工場や事業所に対して、コスト削減の意味合いとして省エネを推進するよう指示があったため、”エネルギー対策=省コスト”という意識が定着してしまっていることが考えられます。 
 
”エネルギー対策=省コスト”という意識が先行し過ぎてしまうと、“省コスト=投資を必要としない省エネ”という結論に陥りがちです。すると、投資を必要とするものの、CO2削減ポテンシャルの大きい選択肢が検討できなくなってしまいます。ゼロカーボンに向けて、省エネは必要なステップではありますが、あくまでも施策のひとつに過ぎません。

例えば、企業の営業戦略を検討する場面について想像してみてください。売上ポテンシャルが高い分野を開拓しようと思った時に、販促等のコストをかけないようにするでしょうか。費用対効果が十分であれば、それ相応のコストをかけるのではないでしょうか。

ゼロカーボンを考える場合も同じです。目的が省コストのみであれば、投資を必要としない省エネは有効な手段かも知れません。しかしながら、2030年に46%削減、2050年にゼロカーボン、という大目標を達成するためには、まずは、CO2の削減ポテンシャルの大きい領域を分析の上、中長期のランニングコストなどを含めて総合的に検討することが望ましいはずです。

✓ ゼロカーボンの取り組みは、これまでの省コスト活動の延長線ではない。

このような新しいメッセージを本社から工場や事業所に改めて発信し、全社の意識を変化させることが、ゼロカーボンの取り組みの第一歩としてまずは重要となります。

2. 投資判断基準の改革 ~いまの費用対効果、正しいですか?~

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■コンサルティングで出会ったお客さまの声
― 省CO2設備への更新について予算申請をしたいが、いまの社内ルールでは残念ながら採用されないだろう。(工場 設備管理部門)

企業では、予算の申請ルールや費用対効果の評価条件が細かく決まっています。例えば、設備改修の場合、イニシャルコストとランニングコストメリットに基づく単純回収年数が基準年を満たしているか、などが挙げられます。また、ルールとは異なりますが、経年による回避しがたい設備改修については、既存の方式が採用されやすい風潮や、ランニングコストメリットよりもイニシャルコストを優先する傾向など、省CO2対策が進まない状況もよく見受けられます。

そこで、お勧めしたいのが、”インターナル・カーボンプライシング”という考え方です。カーボンプライシングとは、炭素税や排出量取引などにより炭素に価格を付けることでCO2の排出削減に対する経済的インセンティブを創り出し、気候変動への対応を促す仕組みです。インターナル・カーボンプライシングは、企業内部で独自に設定、使用する炭素価格を指します。

勿論、足元のコストは重要であり、現時点においてイニシャルコストの安価な機器を導入することはコスト削減に直結します。しかしながら、もし、イニシャルコストの安さが決めてとなり、導入した設備がCO2を多く排出するのであれば、今後10~20年間における企業のCO2排出に大きな影響を及ぼすこととなり、中長期で考えた場合、コスト抑制できたとは言えない可能性があります。

将来、炭素税を払うことやCO2価値を他から買い取ることになり余計にコストがかかる事態も想定されますし、投資家やユーザー(消費者)からの企業イメージを損なう可能性もあります。

そのため、将来発生する可能性のあるリスクに対して今時点から配慮し、設備投資検討の判断基準として加える、このような”インターナル・カーボンプライシング”の取り組みは、毎年、各工場・事業所から設備改修計画が挙がってきている場合、企業として常にリスクに直面していることを認識し、できるだけ早期に検討を進めていくべき社内ルールのひとつだと言えます。

また、企業によっては、補助金を活用したいものの、予算申請時には補助金の採択が未確定であるため、予算申請に補助額は反映できないルールがあるなど、CO2削減につながる新しい取り組みを検討する上で阻害要因となってしまっているケースもありました。

前述した通り、既存と同じ方式での改修の方が社内を通しやすい風潮も、明確にルールとして定めはないものの、日々のコンサルティングを通して、確かに存在していると感じています。そのため、既存と同じ方式を採用する場合は、審査基準を通常より厳しくするなど、企業の風土を反映した独自のルール設定が求められます。

✓ インターナル・カーボンプライシング等を活用し、投資時に中長期のCO2排出リスクを適正に判断できる投資判断基準設定する。
✓ 補助金活用や先進的な設備システムの検討を慫慂する上申ルールを設定する。

このような社内ルールの設定が、企業としてCO2削減目標を掲げるだけに留まらず、目標につながる行動を導くステップとしてとても重要となります。

3. 評価制度の改革 ~一致団結して戦える組織づくり~


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■コンサルティングで出会ったお客さまの声
― ゼロカーボンに関する本社提案について社内調整しているものの、各工場・事業所から反発がある。(本社 環境部門)
― 本社からゼロカーボンに関する提案が届いているが、現場が評価される提案となっておらず、工場主導で異なる提案を進めていきたい。(工場 設備管理部門)

ゼロカーボンにつながるCO2削減の取り組みは、本社が中心となり、全社を巻き込みながら推進をしていく必要があります。そのため、本社と異なる事業所での取り組みでも、評価対象は本社(コーポレート部門)となる場合があり、事業所としては手間のわりに評価が乏しく、取り組みに積極的に関わるインセンティブがはたらかないケースがあります。このように、取り組みの良し悪しではないことが原因で、活動そのものが停滞してしまうという事例がありました。

私も過去、本社にて各事業所との調整役も担当していた経験もあり、よく理解できるのですが、本社の想いのみで強制力を持って取り組みを推進したとしても、“事業所にもメリットがある”かつ“事業所が取り組み内容に腹落ち”していない限り、全社の活動として機能しません。

また、ゼロカーボンはビジョンありきでストーリーが描かれる傾向が強いため、ある程度、トップダウンで進める要素が強いとは考えますが、それでも、具体的な活動を推進や目標の積み上げ等を行うステップでは、本店と事業所が協力し合い、地に足をついた活動が必要不可欠であり、それを支える評価制度や組織運営がポイントとなります。

そのため、評価制度については、” 施策を立案する本社、施策を実行・運用する現場、双方とも適切に評価される仕組み”の設定が望ましいと言えます。

そして、取り組み内容は全社内で共有を行い、社内での表彰も実施する等、常に従業員皆様のモチベーションを高く維持することが大切です。また、条件(建物や設備構成など)的にCO2削減につながりにくい事業所もあると思いますので、このような事業所の方々が仲間外れにならないよう、全社ワーキングを立ち上げるなど、全社一丸となった取り組みを推進するための仕組み作りが必要となります。

ゼロカーボンはお金も時間も手間もかかる大変な社会課題ではありますが、逆に、全社共通の課題であるCO2削減をテーマに一致団結できるキーコンテンツとして、うまく利用されるのが良いのではないでしょうか。

✓ 全社が一体となれるように、本社と事業所をそれぞれ評価できる社内制度を設定する。
✓ CO2削減を全社共通のキーコンテンツとして積極的に利用し、世の中から必要とされる企業・組織改革 につなげる。

4. 外部パートナーとの連携 ~外部の力で活動を加速させる~

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■コンサルティングで出会ったお客さまの声

― ゼロカーボンに取り組みたいものの、マンパワーやノウハウが足りない。(本社 経営層)

ゼロカーボンに先行して取り組んでいる企業であっても、事務局が数名で運営されていることは多々あります。大多数の企業にとって、ゼロカーボンはこれから検討していくべき課題であり、純粋な追加ミッションとして扱われ、配員も十分でない場合も多く見受けられます。そのため、重要となってくるのが、外部パートナーとの密な連携です。

外部パートナーの活用はコストアップ要因になりますが、前述の通り、事前の準備やメッセージの発信方法など、多くの検討すべき項目に対処し、取り組み全体を完遂する上で、非常に重要となってきます。そのため、例えば、ビジョンの設置や具体的な施策の検討など、それぞれのポイントで適した外部パートナーの力を活用しながら、事務局が中心となってミッションをコントロールしていく方が、効率的かつ効果的だと言えますし、現実的な策となります。

将来に渡って、内製化するなという話では決してありません。一方で、内製化できるまで待ってくれる課題でもありません。まずは、社内の人材が整い、最低限のスキル付与が進むまでは、外部パートナーとの関係をこれまで以上に密にしていきながら、総合的な検討を少しずつでも前に進めていくことが重要ではないでしょうか。

✓ 各ステップに応じて外部パートナーと連携し、ひとつひとつ検討を確実に進めていく。

5. まとめ

ここまで、お客さまからの声をきっかけとした、ゼロカーボンに向けて、最初に取り組むべき4つのアクションついて紹介してきました。

<等身大のゼロカーボン~最初に取り組むべき4つのアクション~ まとめ>

― 1. 企業全体の意識を改革し、ゼロカーボンの気づきが生まれる基盤を創る。
✓ ゼロカーボンはこれまでの省コスト活動の延長線ではないという明確なメッセージを発信する。

ー 2. 投資判断基準を改革し、ゼロカーボンにつながる対策を提案できる基盤を創る。
✓ インターナル・カーボンプライシング等を活用し、投資時に中長期のCO2排出リスクを適正に判断できる上申ルールを設定する。
✓ 補助金の活用や先進的な設備システムの検討を慫慂する上申ルールを設定する。

― 3. 評価制度を改革し、誰もがゼロカーボンを推進したくなる基盤を創る。
✓ 全社が一体となれるように、本社と事業所をそれぞれ評価できる社内制度を設定する。
✓ 脱炭素を全社共通のキーコンテンツとして積極的に利用し、勝てる組織改革につなげる。

― 4. 外部パートナーと連携し、ゼロカーボンを加速させていく。
✓ 各ステップに応じて外部パートナーと連携し、ひとつひとつ検討を確実に進めていく。

いかがでしたでしょうか。最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
本記事でご紹介したアクションに対する具体的な取り組み内容については、また別の機会にアップデートしていきたいと思います。

※本記事は作成者個人の意見や感想に基づき記載しています。

この記事を書いたメンバー

島崎 智史

島崎 智史

富山県出身で純喫茶巡りと日本酒が趣味。産業分野の法人へのエネルギー戦略・省エ ネコンサルティングを担当し、お客さまのリアルな声から会社を動かし、ソリューションを通してお客さまの課題を解決することが使命。ゼロカーボン板では、普段からの何気ない疑問に真摯に向き合う場所を目指して執筆に取り組んでいきます。

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